「いざ」と言う時に地域の足を引っ張る原子力発電

原子力発電は電気の安定供給どころか地社会の足を引っ張ります。

自然災害の多発する日本。

いざ災害が発生すると生活に必要なインフラのダメージが発生します。

これに伴い当該地域全体が停電となる事も想定されるのですが、電気に頼り切った現代社会では真っ先に一般の家庭や工場で速やかな電力の復旧を望む声が発生します。

そんな状況の中、一般家庭や工場等に電力を供給する事よりも優先して電力の供給を行わなければならない施設が”原子力発電所”となります。

自然災害が発生した場合、原子炉停止操作が行われる訳ですが、原子力発電所が発電していない状況となると逆に電力を優先して供給しなくてはならない施設となってしまいます。

それは東日本大震災の発生時に我々が経験した様に、原子力発電所が全電源喪失するとどうなるのか? 使用済みウランやプルトニウム燃料の崩壊熱の除去が出来ずに高温、高圧下で水素ガスが発生し、”原子炉大爆発”と言う大惨事が発生してしまいます。

そう、ウランやプルトニウムの”崩壊熱”を除去する為にはポンプで水を循環させる事によって冷却し続けなければならないのです。我々の生活や地域の復興に必要不可欠な電気を原子力発電所に優先的に供給しなければならない。 社会全体がとても便利な電気に頼り過ぎている事も問題ですが、原子力は地域社会の復興の足を更に引っ張ります。

Anjin

「原子力発電所」って、ただの不良品ボイラー。

何故 ”不良品ボイラー”なのか?

それは原子力発電による水蒸気発生のメカニズムによる所が大きいのですが、乾燥蒸気を作る事が出来ないから。

何故 “乾燥蒸気を作る事が出来ない” と不良品なのか?

水蒸気に含まれる “水” の力はとても恐ろしいです。

あらゆる機器や配管に悪影響を及ぼします。

特に原子力発電の場合、原子炉内部で核分裂の時に発生する熱によって加熱された水から発生した水蒸気は原子炉上部にあるドライヤーセパレーターで水分と蒸気に分離されます。

ところが、このドライヤーセパレーターでは完全に分離する事が出来ない為、放射性物質の含まれた主蒸気(MS)の湿った蒸気によって配管内面は侵食されます。

そして主蒸気(MS)は高圧タービンを回転させた後、抽気(ES)と名前を変え、クロスアラウンド配管(この配管は人が中腰で配管内を歩ける位に太い)から湿分分離器を経由し、更に抽気配管を通って低圧タービンへ。この過程で抽気配管内部を侵食し、配管内部は鍾乳洞の様になってしまいます。

そしてタービンの翼を侵食し、復水器で冷却され水に戻ります。

途中湿分分離器(モイスチャーセパレーター)の様に水分と蒸気を分離する機器はあるのですが、完全には水分と蒸気に分離出来ません。

初期に設計された原子力発電所の抽気(ES)配管には通常の炭素鋼を使用していたのですが、蒸気に含まれる水分がその他の機器を侵食する力が強い為、侵食された配管の肉厚が薄くなり蒸気が配管を貫通したり、配管の繋ぎ目から放射性物質の含まれた蒸気が漏れたりしました。

その為、ある原子力発電所では抽気配管の材質を炭素鋼からステンレス鋼に交換する大工事が行われました。しかし、それでも蒸気に含まれた水分の力は強く、日々各機器や配管を侵食しています。

これが欠陥ボイラーと言った訳です。

基本的に火力発電や原子力発電は、発生させた「熱」により水を沸騰させ、水蒸気を発生させ蒸気の力でタービンおよびジェレネーター(発電機)を回転させて電気を作ります。

ここで重要なのは「蒸気の質」。

火力発電(石炭、石油、天然ガス 等)で発生した蒸気でも湿分が多いと蒸気の通る配管や機器を侵食し悪影響を及ぼす為、再加熱(湿分の多い蒸気を更に加熱して湿分の少ない乾燥蒸気にする事。) を行い、機器や配管に及ぼす悪影響を可能な限り少なくし、乾燥蒸気でタービンを回します。

原子力の熱で発生した蒸気は再加熱が出来ずに湿分の多いまま。湿った蒸気が配管や各機器に悪影響を及ぼし、侵食しながらタービンを回転させる事になります。 因みに原子力で発生した蒸気を再加熱しようとすると、石炭や天然ガス又は石油等の”化石燃料”と呼ばれている燃料を燃焼させて再加熱する事になるので二酸化炭素の排出量が少ない筈の原子力発電のメリットが無くなってしまいます。

Anjin

原子力発電所の立地に適した「安定した土地」など日本国内には存在しません。

これは原子力発電所の立地に関わる問題と使用済み核燃料(核のゴミ)の廃棄場所共に問題となります。

以前から言われていた事ですが、原子力発電所は「トイレの無い高級住宅」と例えられる事が有ります。対策も決められず無責任な政治家によって常に後回しとされて来た使用済み核燃料の廃棄問題。本気で原子力発電を推進するのであれば、日本の未来や子々孫々の事を真面目に考え、最初にクリアしておかなければいけない問題です。

無責任な政治家は後世にとんでもない負の遺産を残しておいて「我々はここまでやったんだから、後の事は後世の人間が考えれば良いんだ。」なんて事を平気で言ってのける。

これに関しては国の借金問題にも当てはまるのですが、「今、を取り合えず良くすれば票も取れる。」話が逸れるので原子力発電所の問題に戻しますが、何でもかんでも後世に負の遺産を残すのは止めなければなりません。

私自身は機会に恵まれずに結婚もせずに子供も居りません。

しかし、普通の家庭を築いている方達にとって、現在の私達の生活を豊かにする為に作り出した負の遺産である使用済み核燃料の処理問題によって、後世の子供達が頭を痛めている様子が目に浮かびます。 自然災害大国である日本。特に火山活動や地殻変動の地震による災害は日本全域で頻繁に発生します。使用済み核燃料を安定的に保管出来る様な土地は存在しません。

Anjin

想像力の欠如した技術者は何でもかんでも「想定外」な現実。

原子力発電に携わる技術者は我々が予想する以上に想像力が欠如しており、自分の都合が悪くなると「想定外だから仕方が無い」と言った魔法の呪文を唱え、自分の責任を回避します。(ここで言う”想定”とは、施設を設計する段階の根拠の事)

私は原子力発電所に携わっていた当時、原子力発電所の設計や建設に従事していた職員に、「事故が発生する度に”想定外”って呪文を唱えて責任逃れをするのはズルい」と言ったら、本気になって切れられた事が有ります。

設計の段階で想定されていなかった問題による事故や不具合は全て自分たちの責任の範囲外の”想定外”なのだそう。

そう言えば、事前に調査を行っているのに周囲に干渉物が有ろうが地盤が悪かろうが、平面に清々と設計図に落としてくる設計者。自分の事だけが精一杯で他の事は考える余裕も無いのではないか?

想像力が欠如している以前に、こんな人達が設計した原子力発電所なんて信じられん。

例えば、東日本大震災で発生した被害に於いて、津波によって非常用ディーゼル発電機が水没し非常用電源が使用出来なくなったのは想定外。

道路が寸断され、資材の搬入に時間を要したのも想定外。

原子炉が水素爆発したのも想定外。

JCOの臨界被ばく事故に於いて作業員がバケツでウランを混ぜる行為を行なった事実も”想定外”。 自分が現場作業者の立場で、実際にその作業を行う事を想像すれば、”作業する立場” なら、少しでも労力を削減する為にこんな事はやりそうだな”と言った事は容易に想像出来るだろう。

Anjin

日本の周囲には、国際的な取り決めを守れない国家が沢山(しかもこの中には国連の常任理事国も居るぞ)

最近では世界中がキナ臭い状況になって来ましたが、戦争によって原子力施設が攻撃されるなんて事も想定外。

私自身が原子力発電所に従事していた時は、国際的な取り決めに於いて原子力施設やダム、堤防等は攻撃したらいけない事になって居るので、「戦争になっても原子力発電所が攻撃される何て事は絶対に無い。」と言われて来ました。(ジュネーブ条約第56条ではダム、堤防、原子力発電所等の工作物を戦時下に保護するよう定めている。)

 ところがロシアのウクライナ侵攻を見ても判る様に、いざ本物の戦争が始まると武力によって最初に攻撃されるのが原子力関連施設を含む様々なインフラ施設でした(ダムやその他の発電所等も含む)。

 原子炉を直接攻撃する迄には至っていません(原子炉を直接攻撃する行為は、攻撃する側もされる側にも全く利益が無いから。)が、一歩間違えれば制御不能の大災害になり得る事は平和ボケした日本人でも日本の周辺を取り巻く国々の行動を考えると他人事では無い事がわかります。 だからこそ私は”想像力の欠如”と言っています。

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もう一度!! 無責任な政治家の怠慢。

「我々はここまでやったんだから、後は来世の人達に引き継げば良いのさ!!」こんな事を平気で言う無責任な政治家。

一般の家庭であれば負の遺産については ”相続放棄” と言う手が使えますが、逃れようの無い負の遺産や借金を作っておいて、それらから逃れる事の出来ない子孫に押し付け「自分はこんなに仕事をやったんだ。」と自己満足している政治家。

とんでもない。迷惑だからあんたの時代に処理して下さい。また、それが出来ないので あれば負の遺産や借金を残さないで下さい。

Anjin